販路開拓というのは、「顧客を獲得する活動」ですが、これは経営を行う上で最も重要でかつ難しく、特に中小製造業においては不得意な分野であると白書では位置づけています。白書の記述の要約は以下のとおりです。

(1) 中小企業において不得意とされる販売活動
 販路開拓という言葉は、「営業活動という売り込むための手段」として捉えられがちであるが、実際にはこうした活動は、営業活動だけで完結するものではない。市場調査から始まり、「製品開発」、「流通」、「販売促進」を経て、これらの活動により顧客ニーズを満たす商品を提供できるようになって、初めて顧客を引き付けることができる。中小製造業のうち、販売促進活動を積極的に行わなくとも充分顧客を確保できる企業はわずか13.2%でしかなく、大部分の中小企業は顧客確保の努力が必要である。

(2)営業目標の設定
 顧客を獲得し、売上高を維持・拡大することは企業にとって必要なことであるが、近年は数ヶ月先の売上見通しも立てにくい状況となっている。多くの企業で確度の高い売上予測が成り立つのは3ヶ月以内であり、特に小規模層においてその割合は高い。ほとんどの経営者は、売上高を維持・拡大するために「売上目標」を設定し、従業員、特に営業人員や販売員に営業目標を課している。特に企業規模が大きくなるにつれて、トップダウンによる目標設定が必要となる。

(3)新たな販路開拓の必要性
 中小企業の顧客開拓の状況をみると「新規開拓」よりも「既存顧客のニーズ掘り起こし」に比重が置かれている状況である。新規開拓に重きを置いている企業でも、新規開拓の成功率は非常に低い。また過去5年間に取引していた顧客数のうち、現在も取引継続している顧客の割合をみると、9割以上維持している企業は、35.6%でしかなく、5年も経てば顧客層が大きく変化する。逆にいえば、新規に顧客を獲得しなければ、顧客はますます減少していくのである。

(4)顧客から選ばれると同時に顧客を選ぶことも必要
 惰性に流されて取引を継続しやすい顧客ばかりに注力することや、全ての顧客を維持しようとすれば、収益性を低下させる可能性があり、顧客に選ばれると同時に顧客を選んでいくことが重要である。こうしたことを実践するためには、普段から管理会計等の財務会計を実施し、どのような顧客が収益をもたらすかを確実に見極める必要がある。

(5)信用力を補う第三者の認定
 中小企業から仕入や外注を行う場合に、仕事内容以外に経営者の行動や倒産懸念といった企業信用力等が重視される。また、規模が大きい企業ほど取引先を選ぶ際に客観的に判断できる特許やISO等の第三者認定を求める傾向が高い。また、小規模製造業にとって、学会等での自社技術の発表は効果的である。

(6)中小企業でも重要となるブランド戦略
 価格競争が激化している近年では、販売促進活動を効果的に行うために、自社ブランド(=自社が扱う商品名、店舗名の標章(商品ブランド)や自社名そのものの標章(企業ブランド))の取組の重要性が増している。小規模企業においても39.2%が自社ブランドを持っており、自社ブランドは中小企業においても販売促進活動の一つとして活用されている。しかし現状においては、規模が小さい企業ほどブランドという観点では海外市場に対する意識がまだまだ弱い状況である。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 マーケティングの世界でよく取り上げられる言葉として、マーケティングミックスというものがあります。これはマーケティングに必要な要素である4つのP、つまり「流通(Place)」「販売促進(Promote)」「製品(Product)」「価格(Price)」のことをいいます。白 書でいう「マーケットを見据えた販路開拓」は、つまるところマケットインに立脚したアプローチであり、マーケティングミックスを意識した販路開拓活動の実践が重要であると説いているものと思います。

 一般的に、企業を取り巻く外部の環境というものは、企業にとってコントロール不可能であるのに対し、マーケティングの手段の組合せであるマーケティングミックスはコントロール可能な要因です。このため、適切なマーケティングミックスを開発することによって、企業は初めて環境に適応することができるようになります。しかし、外部環境の変化があまりにも大きい場合、現業に基づくマーケティングミックスでは対応しにくいこともあります。そのことからも、経営革新という名の新たな取組(=新事業活動)が必要となるわけです。

2005年版中小企業白書