第4章 費用を支払う

 会社は、設立してからいろいろな取引をします。その中心は、第3章で説明しました商品を購入し販売する活動ですが、これら取引は、自然発生するものではありません。従業員が販売努力をするとか、店舗の電気を使わなければならないとか、レジペーパーを使うとか、いろいろと商品売買に付随する取引が生じます。
 ここでは、特に、費用というものについての会計処理をみていくことにします。

1 人件費(給料、賃金、賞与、退職金等)
 会社は、人を雇って給料を払います。これらの会計処理についてまず説明していきます。
 従業員に支払い報酬には、給料、賃金、賞与が通常生じます。これらを人件費といいます。給料は、総務、営業等の部課の従業員への報酬を意味します。賃金は、製造部課の従業員への報酬を意味します。賞与は、ボーナス等です。雑給は、アルバイトやパートへの支払に使う勘定科目です。
 例16株式会社羽生商店は、従業員の給料200,000円を、従業員の源泉所得税10,000円、住民税5,000円、健康保険料5,000円を差引いて、当座預金から振り込んだ。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
給料 
200,000
当座預金
預り金 
180,000
20,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
    給料 
180,000

預り金

借方
金額
貸方
金額
    給料 
20,000

給料

借方
金額
貸方
金額
諸口 
200,000
   

 従業員の給料を支払った場合、給料という費用の勘定科目を借方に記入しますが、その際の金額は、総支給額で記入します。また、従業員の源泉所得税、住民税(市町村民税や都道府県民税)、社会保険料等(健康保険料、厚生年金、雇用保険等)は、預り金という負債の勘定科目で記入します。なお、実務上、社会保険料等は、法定福利費で預かった際も支払った際も記入することがあります。

 例17:株式会社羽生商店は、従業員の源泉所得税10,000円、住民税5,000円を現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
預り金 
15,000
現金 
15,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    預り金 
15,000

預り金

借方
金額
貸方
金額
現金 
15,000
   

 従業員から預かった源泉所得税や住民税を支払った場合には、預り金という負債はなくなりますので貸方に記入することになります。
 例18:株式会社羽生商店は、従業員の健康保険料10,000円を小切手で支払った。なお、従業員負担分5,000円は預り金で処理してある。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
預り金
法定福利費 
5,000
5,000
当座預金 
10,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
    諸口 
10,000

預り金

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
5,000
   

法定福利費

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
5,000
   

 源泉所得税や住民税は、預かった額を支払うことになりますが、社会保険料等(国民健康保険や国民年金は除く)は、従業員と雇用者(会社)で按分負担になります。会社負担分は、法定福利費という費用となります。この例では、5,000円が会社の費用となりますので、借方に法定福利費5,000円と記入します。また、従業員負担分は、給料から差引いて預かっていますので、預かっているものを支払ったというように記入することになります。従って、借方に預り金という負債を記入します。

2 旅費交通費
 会社は、出張費用を支払ったり、また、従業員の交通費(定期代等)を支給したりします。これらの費用は、旅費交通費として処理されます。従って、通常は、それらの費用を支払った際に、借方に旅費交通費として記入します。
 例19:株式会社羽生商店は、従業員のバス定期代10,000円を現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
旅費交通費 
10,000
現金 
10,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    旅費交通費 
10,000

旅費交通費

借方
金額
貸方
金額
現金 
10,000
   

 例20:株式会社羽生商店は、従業員の出張費用30,000円を現金で仮払した。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
仮払金 
30,000
現金 
30,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    仮払金 
30,000

仮払金

借方
金額
貸方
金額
現金 
30,000
   

 従業員が出張する際に、会社が出張前に現金を渡すことがあります。その時には、まだ、出張にいっていくら使うか決まっていませんので、こうした支払の内容が確定していない場合に使うのが、仮払金という資産の勘定科目です。
 例21:上記(例20)の出張費用の内訳(宿泊費20,000円、電車代9,000円、タクシー代2,000円)が従業員から提出され、不足分を現金で清算した。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
旅費交通費 
31,000
仮払金
現金 
30,000
1,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    旅費交通費 
1,000

仮払金

借方
金額
貸方
金額
    旅費交通費 
30,000

旅費交通費

借方
金額
貸方
金額
諸口 
31,000
   

 従業員が出張から帰ってきて、その出張に使った実際の経費の領収書等を受取った時に、適切な費用の勘定科目に振替えることになります。この例では、宿泊費、電車代、タクシー代ですから、すべて旅費交通費として処理することになります。なお、仮払した金額がありますので、清算した際には、不足額を従業員に渡すことになります。反対に、仮払した金額より実際に使った金額が少なかった場合には、従業員から返してもらうことになります。

3 通信費
 会社が、電話代、切手代等を支払った場合に使う勘定科目が、通信費です。
 例22:株式会社羽生商店は、切手代800円、はがき代1,000円を現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
通信費 
1,800
現金 
1,800

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    通信費 
1,800

通信費

借方
金額
貸方
金額
現金 
1,800
   

4 広告宣伝費
 会社が、テレビやラジオのCMを製作したり、新聞の折り込む広告をしたり、展示会を催したりして、販売促進を図る場合に使う勘定科目が、広告宣伝費や販売促進費という勘定科目です。
 例23:株式会社羽生商店は、広告代理店加藤広告株式会社に、雑誌広告を依頼した。広告代金120,000円は、来月末に支払うことにした。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
広告宣伝費 
120,000
未払金 
120,000

総勘定元帳
未払金

借方
金額
貸方
金額
    広告宣伝費 
120,000

広告宣伝費

借方
金額
貸方
金額
未払金 
120,000
   

 広告等に関しての支払は、広告宣伝費という費用の勘定科目で処理します。また、商品代金以外の代金を払っていない場合には、未払金という負債の勘定科目を使います。従って、この例では、広告宣伝費が発生し、未払金が増加したように記入することになります。

5 水道光熱費
 会社が、水道代、電気代、ガス代等を支払った場合には、水道光熱費という費用の勘定科目で処理します。
 例24:株式会社羽生商店は、電気代20,000円、ガス代15,000円、水道代5,000円を小切手を振出して支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
水道光熱費 
40,000
当座預金 
40,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
    水道光熱費 
40,000

水道光熱費

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
40,000
   

6 交際費、厚生費
 会社が、取引先を接待して支払った金額は、交際費という勘定科目を使って処理します。なお、打ち合わせに関連するものを会議費という勘定科目で処理することもあります。また、従業員の飲食代、社内の新年会や忘年会の費用、社内の親睦会や運動会の費用は、福利厚生費で処理します。
 例25:株式会社羽生商店は、得意先中原商店株式会社に対して御歳暮として10,000円のコーヒー詰め合わせを送った。代金は、現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
交際費 
10,000
現金 
10,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    交際費 
10,000

交際費

借方
金額
貸方
金額
現金 
10,000
   

 例26:株式会社羽生商店は、社内新年会費200,000円を現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
福利厚生費 
200,000
現金 
200,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    福利厚生費 
200,000

仮払金

借方
金額
貸方
金額
現金 
200,000
   

7 賃借料
 会社は、コピー機等をリースしたり、店舗や駐車場を借りたりして営業することがあります。このような賃貸借契約に基づく支払を行った場合には、賃借料という費用の勘定科目を使って処理します。
 ただし、特殊な機械等のリースについては、注意しなければなりません。これについての説明は、省くことにします。
 例27:株式会社羽生商店は、家賃400,000円を小切手で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
賃借料 
400,000
当座預金 
400,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
    賃借料 
400,000

賃借料

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
400,000
   

 家賃の支払いは、賃借料か地代家賃という勘定科目で処理します。

8 消耗品費
 会社が、文房具、電卓、書棚等を購入した場合には、消耗品費という費用の勘定科目で処理することになります。事務用品に関しては、事務用品費を使って処理することもあります。なお、消耗品費(費用)となるか備品(資産)となるかは、その金額や性質(利用期間)等によって判断します。長期的に利用できるとか、金額が大きいものは、資産として処理しなければなりません。
 例28:株式会社羽生商店は、佐藤家具株式会社から書棚50,000円を購入し、代金は、小切手で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
消耗品費 
50,000
当座預金 
50,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
    消耗品費 
50,000

消耗品費

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
50,000
   

 例29:株式会社羽生商店は、株式会社島からコピー用紙とファイルを購入した。代金30,000円は、小切手で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
消耗品費 
30,000
当座預金 
30,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
    消耗品費 
30,000

消耗品費

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
30,000
   

9 その他の経費
 以上の他にも会社はいろいろな費用を使って、売上をあげるように努力します。
 例えば、壊れた窓を直したりする場合には、修繕費という勘定科目を使い、振込手数料等の手数料を支払った場合には、支払手数料という勘定科目を使います。また、税理士、会計士、弁護士等と顧問契約を結びその報酬を支払った場合には、顧問料という勘定科目を使うことになります。
 以下、簡単に費用の勘定科目を挙げておきます。

 外注費 自社の製品を作る際に、他者に依頼して製品を作ってもらう等の場合に使います。
 保険料 会社の建物や機械の損害保険料の他、会社の役員や従業員の生命保険料(会社受取分のみ)を支払った場合に使います。
 租税公課 会社が事業税、固定資産税、収入印紙等の税金を支払った場合に使います。ただし、法人税や法人住民税は除きます。
 諸会費 会社が会費を支払った場合に使います。
 雑費 会社が支払った費用のうち、適当な勘定科目が内場合に使います。例えば、赤い羽根募金等が挙げられます。

 第3章の最後に示した以下の貸借対照表と損益計算書を基にして、例16〜例29までの取引を考慮して、再び、貸借対照表と損益計算書を作成してみましょう。

貸借対照表

資産の部
金額
負債及び資本の部
金額
現金
当座預金
受取手形
商品
創立費
開業費
合計 
3,900,000
5,300,000
350,000
450,000
500,000
  200,000
10,700,000
支払手形
買掛金
資本金
利益

合計 

150,000
200,000
10,000,000
350,000

      
10,700,000

損益計算書

費用
金額
収益
金額
仕入
利益
合計 
1,000,000
  350,000
 1,350,000
売上

合計 

1,350,000
      
 1,350,000

貸借対照表

資産の部
金額
負債及び資本の部
金額
現金
当座預金
受取手形
商品
創立費
開業費
損失
合計 
3,632,200
4,590,000
350,000
450,000
500,000
200,000
  747,800
10,470,000
支払手形
買掛金
未払金
資本金
 
 

合計 

150,000
200,000
120,000
10,000,000
 

      
10,470,000

損益計算書

費用
金額
収益
金額
仕入
給料
法定福利費
旅費交通費
通信費
広告宣伝費
水道光熱費
交際費
福利厚生費
賃借料
消耗品費
合計 
1,000,000
200,000
5,000
41,000
1,800
1,200,000
40,000
10,000
200,000
400,000
   80,000
 2,097,800
売上
損失
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

合計 

1,350,000
747,800
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

      
 2,097,800