第3章 商品を売買する

 会社を作るのは、何らかの事業をするためです。
 例えば、肉を売る、洋服を売る、美容サービスをする、電子機器を作る等々、いろいろな事業します。こうした会社の主たる営業活動、とりわけ、商品売買を中心に、ここでは、それらの取引の記録について説明していきます。

1 商品を買う
 まず、単純にものを売る会社を考えてみると、売るための商品がなければ始まりません。そこで、売るための商品を買うことになります。商品を購入した時に、商品を購入したことを表すのが、仕入という費用の勘定科目です。例えば、商品を現金で購入した場合の仕訳は、借方に仕入、貸方に現金として記入されます。商品を購入する場合、特に、代金の支払いの形態によって、いくつかの取引例がありますので、簡単に説明していきたいと思います。
 例5:株式会社羽生商店は、商品300,000円を株式会社藤井商事から購入し、代金は、現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
仕入 
300,000
現金 
300,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
300,000

仕入

借方
金額
貸方
金額
現金 
300,000
   

 商品を現金で購入する他に、掛で購入といわれるものがあります。これは、商品を購入して、代金は後日支払うという場合の取引をいいます。
 このように、仕入代金を後日支払う場合に使う勘定科目が、買掛金という勘定科目です。買掛金は、後日支払わなければならないので、負債の勘定科目です。
 例6:株式会社羽生商店は、谷川商会株式会社から商品500,000円を購入し、代金は来月末払とした。
 

仕訳帳
借方
金額
貸方
金額
仕入 
500,000
買掛金 
500,000

総勘定元帳
買掛金

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
500,000

仕入

借方
金額
貸方
金額
買掛金 
500,000
   

 掛けで商品を購入した場合、仕入という費用が発生し、買掛金という負債が増加しますので、借方に仕入、貸方に買掛金と記入して仕訳します。元帳では、仕入については現金で購入した場合と同様に、仕入勘定の借方に記入します。買掛金が仕入によって増加したので、負債の増加は、貸方に記入しますので、買掛金勘定上の貸方に記入します。
 例7:株式会社羽生商店は、上記(例6)の買掛金500,000円をすべて現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
買掛金 
500,000
現金 
500,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    買掛金 
500,000

買掛金

借方
金額
貸方
金額
現金 
500,000
   

 買掛金を現金で支払ったという取引です。買掛金という負債が減少し、現金という資産が減少します。従って、仕訳では、借方に買掛金、貸方に現金と記入することになります。
 例8:株式会社羽生商店は、丸山物産株式会社から商品400,000円を購入し、代金のうち半分は、小切手を振出して支払い、残りは掛とした。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
仕入 
400,000
当座預金
買掛金 
200,000
200,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
200,000

買掛金

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
200,000

仕入

借方
金額
貸方
金額
諸口 
400,000
   

 商品を仕入れた取引ですが、代金の支払いに小切手を用いるという取引です。小切手を振出して支払った場合に使う勘定科目が、当座預金という資産の勘定科目です。当座預金から支払うわけですから、当座預金は貸方に記入されます。
 例9:株式会社羽生商店は、谷川商会株式会社に対して、商品の手付金として、現金100,000円を支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
前払金 
100,000
現金 
100,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    前払金 
100,000

前払金

借方
金額
貸方
金額
現金 
100,000
   

 手付金を支払うということがあると思いますが、それがこの取引です。手付金は、商品という資産に将来変化するか、キャンセルによって現金が戻ってきますから、資産に該当します。従って、手付金は資産になります。手付金という資産を表す勘定科目は前払金ですので、手付金を支払った場合には、借方に記入されることになります。
 例10:株式会社羽生商店は、商品250,000円を谷川商事株式会社から購入した。なお、商品代金のうち、100,000円は、上記(例9)の手付金を相殺し、残りは、約束手形を振出して支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
仕入 
250,000
前払金
支払手形 
100,000
150,000

総勘定元帳
前払金

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
100,000

支払手形

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
150,000

仕入

借方
金額
貸方
金額
諸口 
250,000
   

 商品を仕入れた場合には、これまでと同様に、借方に仕入勘定で表現します。この取引は、先に手付金(前金)として支払っていた商品が到着したという取引になり、仕入代金の一部は、前払金という資産で支払ったというように表現することになります。従って、仕訳では、前払金を貸方に記入します。次に、250,000円のうち、100,000円のみが支払われていて、残りを約束手形を振出したわけですから、支払手形という負債が増加しましたので、貸方に支払手形と記入します。
 例5〜例10までの総勘定元帳をまとめると次のようになります。

現金

借方
金額
貸方
金額
    仕入
買掛金
前払金 
300,000
500,000
100,000

当座預金

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
200,000

前払金

借方
金額
貸方
金額
現金 
100,000
仕入 
100,000

支払手形

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
150,000

買掛金

借方
金額
貸方
金額
現金 
500,000
仕入
仕入 
500,000
200,000

仕入

借方
金額
貸方
金額
現金
買掛金
諸口
諸口 
300,000
500,000
400,000
250,000
   

 

2 商品を売る
 商品を買ったら今度はそれを売る取引についての処理を説明していくことにします。商品等を販売した場合には、売上という収益の勘定科目を使って表現します。商品購入の時と同様に、代金の回収の形態が幾つかあるので、例を挙げながら確認していくことにしましょう。
 例11:株式会社羽生商店は、中原商店株式会社に商品400,000円を販売し、代金を現金で回収した。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
現金 
400,000
売上 
400,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
売上 
400,000
   

売上

借方
金額
貸方
金額
    現金 
400,000

 商品を販売した場合には、売上という収益勘定を貸方に記入して仕訳することになります。ここでは、代金は、現金で回収したので、現金は増えることになりますから、借方に現金を記入することになります。今までと同様に、仕訳で借方に記入した勘定科目は、その勘定科目の元帳の借方に記入し、仕訳で貸方に記入した勘定科目は、その勘定科目の元帳の貸方に記入します。従って、現金の元帳には、現金という資産が増えた時は借方に、売上の元帳には、売上という収益が発生した時は貸方にということで、上記のように記入します。
 例12:株式会社羽生商店は、有限会社森内物産へ商品500,000円を販売し、代金は、来月末に受取ることとした。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
売掛金 
500,000
売上 
500,000

総勘定元帳
売掛金

借方
金額
貸方
金額
売上 
500,000
   

売上

借方
金額
貸方
金額
    売掛金 
500,000

 売買代金の未払や未収の状態を掛といい、仕入代金は買掛金という負債の勘定科目、売上代金は売掛金という資産の勘定科目を使います。この例では、商品を販売して、代金を回収していないので、売掛金となります。
 例13:株式会社羽生商店は、有限会社森内物産から上記(例12)の売掛金500,000円を現金で受け取り、直ちに、当座預金に預け入れた。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
500,000
売掛金 
500,000

総勘定元帳
当座預金

借方
金額
貸方
金額
売掛金 
500,000
   

売掛金

借方
金額
貸方
金額
    当座預金 
500,000

 売掛金が入金した場合は、売掛金という資産が減少しますので、貸方に記入することになります。この例では、現金で受け取ったのですが、直ぐに、当座預金に預け入れてしまったので、借方には、当座預金という勘定科目を入れることになります。
 例14:株式会社羽生商店は、有限会社米長商店から商品の手付金100,000円を現金で受け取った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
現金 
100,000
前受金 
100,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
前受金 
100,000
   

前受金

借方
金額
貸方
金額
    現金 
100,000

 商品の手付金を受け取った場合に使う勘定科目は、前受金という負債の勘定科目です。従って、この取引については、現金という資産の増加と、前受金という負債の増加を表現することになりますので、借方に現金、貸方に前受金として仕訳することになります。
 例15:株式会社羽生商店は、有限会社米長商店へ商品450,000円を販売し、上記(例14)の手付金を差引いて、約束手形で受取った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
前受金
受取手形 
100,000
350,000
売上 
450,000

総勘定元帳
受取手形

借方
金額
貸方
金額
売上 
350,000
   

前受金

借方
金額
貸方
金額
売上 
100,000
   

売上

借方
金額
貸方
金額
    諸口 
450,000

 商品を販売したので、貸方に売上と記入しますが、借方には、既に受け取っている手付金を減らしますので前受金が入ります。また、350,000円は約束手形で受取ったので、受取手形という資産の勘定科目が入ることになります。
 例11から例15までの総勘定元帳をまとめると次のようになります。

現金

借方
金額
貸方
金額
売上
前受金 
400,000
100,000
   

当座預金

借方
金額
貸方
金額
売掛金 
500,000
   

受取手形

借方
金額
貸方
金額
売上 
350,000
   

売掛金

借方
金額
貸方
金額
売上 
500,000
当座預金 
500,000

前受金

借方
金額
貸方
金額
売上 
100,000
現金 
100,000

売上

借方
金額
貸方
金額
    現金
売掛金
諸口 
400,000
500,000
450,000

 次に、第2章の最後に示した次の貸借対照表を下にして、第3章の例5〜例15までの取引を考慮した貸借対照表と損益計算書を作ってみることにします。ただし、次の取引があったとします。
 例:株式会社羽生商店は、当座預金に5,000,000円を預け入れた。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
当座預金 
5,000,000
現金 
5,000,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    当座預金 
5,000,000

当座預金

借方
金額
貸方
金額
現金 
5,000,000
   

 現金からある預金に預け入れる場合があります。その場合には、現金を貸方に、預金を借方に記入します。

貸借対照表

資産の部
金額
負債及び資本の部
金額
現金
創立費
開業費
合計 
9,300,000
500,000
  200,000
10,000,000
資本金
 
 

合計 

10,000,000
 

        
10,000,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
売上
前受金 
400,000
100,000
仕入
買掛金
前払金
当座預金 
300,000
500,000
100,000
5,000,000

当座預金

借方
金額
貸方
金額
売掛金
現金 
500,000
5,000,000
仕入 
200,000

受取手形

借方
金額
貸方
金額
売上 
350,000
   

売掛金

借方
金額
貸方
金額
売上 
500,000
普通預金 
500,000

前払金

借方
金額
貸方
金額
現金 
100,000
仕入 
100,000

支払手形

借方
金額
貸方
金額
    仕入 
150,000

買掛金

借方
金額
貸方
金額
現金 
500,000
仕入
仕入 
500,000
200,000

前受金

借方
金額
貸方
金額
売上 
100,000
現金 
100,000

仕入

借方
金額
貸方
金額
現金
買掛金
諸口
諸口 
300,000
500,000
400,000
250,000
   

売上

借方
金額
貸方
金額
    現金
売掛金
諸口 
400,000
500,000
450,000

貸借対照表

資産の部
金額
負債及び資本の部
金額
現金
当座預金
受取手形
創立費
開業費
合計 
3,900,000
5,300,000
350,000
500,000
  200,000
10,250,000
支払手形
買掛金
資本金
利益

合計 

150,000
200,000
10,000,000
-100,000
      
10,250,000

損益計算書

費用
金額
収益
金額
仕入
利益
合計 
1,450,000
 -100,000
 1,350,000
売上

合計 

1,350,000
      
 1,350,000

 貸借対照表や損益計算書を作る場合、勘定科目の元帳の借方と貸方の差額を集計することになります。また、貸借対照表項目は、期首にある残高に期中の取引を加減して、期末残高を求めます。例えば、現金でいえば、期首残高は9,300,000円で、期中の借方合計500,000円、貸方合計900,000円ですから、9,300,000円+500,000円−900,000円=8,900,000円となります。
 なお、ここでは、売上げた商品の元の値段と仕入勘定の残高とは関連がありません。費用にできるのは、仕入れたもののうち、売った部分についてです。例えば、この例で、期末に在庫が450,000円あったとすれば、売上げた部分の商品代金、即ち、売上原価は、仕入れた額から在庫の分を除いた1,000,000円になります。
 これを計算式で表現すると、期首商品棚卸高+当期仕入高−期末商品棚卸高=売上原価となります。
 例に基づくと、次のようになります。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
商品 
450,000
仕入 
450,000

総勘定元帳
商品

借方
金額
貸方
金額
仕入 
450,000
   

仕入

借方
金額
貸方
金額
現金
買掛金
諸口
諸口 
300,000
500,000
400,000
250,000
商品 
450,000

貸借対照表

資産の部
金額
負債及び資本の部
金額
現金
当座預金
受取手形
商品
創立費
開業費
合計 
3,900,000
5,300,000
350,000
450,000
500,000
  200,000
10,700,000
支払手形
買掛金
資本金
利益
 

合計 

150,000
200,000
10,000,000
350,000

      
10,700,000

損益計算書

費用
金額
収益
金額
仕入
利益
合計 
1,000,000
  350,000
 1,350,000
売上

合計 

1,350,000
      
 1,350,000

 ○練習問題
 Q.1.次の取引を仕訳してみましょう。
 A.商品500,000円を仕入れ、代金のうち、200,000円は小切手を振り出し支払、残りは掛とした。なお、引取運賃5,000円は現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
       

 B.商品800,000円を販売し、代金のうち半分は、小切手で受取り、残りは約束手形で受取った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
       

 C.商品500,000円を仕入れ、代金のうち一部は、上記(B)の約束手形を裏書譲渡し、残りは掛とした。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
       

 D.商品500,000円を販売し、代金のうち300,000円は、当店振出小切手で受取り、残りは、約束手形で受取った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
       

 解答

借方
金額
貸方
金額
仕入
505,000
当座預金
買掛金
現金
200,000
300,000
5,000
借方
金額
貸方
金額
現金
受取手形
400,000
400,000
売上 
800,000
借方
金額
貸方
金額
仕入
400,000
受取手形
買掛金
400,000
100,000
借方
金額
貸方
金額
当座預金
受取手形
300,000
200,000
売上 
500,000

 Q.2.期首に売掛金300,000円、買掛金200,000円があったとして、次の取引を行った場合の売掛金と買掛金の残高はいくらでしょうか。
 A.商品600,000円を仕入れ、代金のうち400,000円は、現金で支払い、残りは掛とした。
 B.商品400,000円を仕入れ、代金のうち100,000円は、他店振出小切手で支払い、残りは掛とした。
 C.買掛金400,000円を支払うために、同額の小切手を振出した。
 D.商品700,000円を販売し、代金は掛とした。
 E.売掛金代金として、500,000円の約束手形を受取った。
 F.商品300,000円を販売し、代金のうち、200,000円は当店振出の約束手形で受取り、残りは掛とした。

売掛金の残高
買掛金の残高

 解答

売掛金の残高
600,000円
買掛金の残高
300,000円

 Q.3.次の表のA〜Dに適当な金額を入れてみましょう。

期首商品棚卸高
当期仕入高
期末商品棚卸高
売上原価
300,000
1,500,000
200,000
A
100,000
500,0000
B
400,000
C
2,000,000
400,000
1,800,000
500,000
D
300,000
2,700,000

 解答

期首商品棚卸高
当期仕入高
期末商品棚卸高
売上原価
300,000
1,500,000
200,000
1,600,000
100,000
500,0000
200,000
400,000
200,000
2,000,000
400,000
1,800,000
500,000
2,500,000
300,000
2,700,000