第2章 会社を始める

 会社(法人企業)には、一般的に、有限会社と株式会社があります。設立にあたって、両者ともに資本金が必要です。有限会社は300万円、株式会社は1,000万円以上必要になります。
 会社の出資者(所有者)から現金やその他の資産(例えば、土地や建物等)を会社が受け入れた場合、それが借入れたものでなければ(返済する必要がなければ)、それは資本金といわれるものです。

図表 出資者と会社の関係からみた資本金

出資金
出資者
出資者
出資者
出資者
資本金
会社

 会社を設立するために、出資者から受け入れた資産は、会社の資産ですので、会社の資産が増えたことを表すために、受け入れられた資産に該当する勘定科目を借方に記入して仕訳します。一方、資産が増えるのは、出資(元入れ)によるものなので、これを表す資本金という資本の勘定科目を使いますが、出資によって、資本金が増えますので、貸方に記入して仕訳をします。
 例えば、現金/資本金や土地/資本金というように、仕訳することになります。
 例1:羽生さんは、現金1,000万円を出資し、株式会社羽生商店を設立した。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
現金 
10,000,000
資本金 
10,000,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
資本金 
10,000,000
   

資本金

借方
金額
貸方
金額
    現金 
10,000,00

 例1の仕訳でいえば、会社の現金が1,000万円増えますから(資産の増加)、現金を借方に記入することになります。次に、現金が増えた原因を確認します。なぜ、現金は増えましたか。その理由は、出資者(株式会社なので株主)である羽生さんが、出資したためです。従って、出資者の出資額を表す資本金が提供されたからですので、貸方に資本金と記入することになります。
 元帳についても、取引の8要素に従って考えます。現金という資産の勘定が増えましたから、現金の元帳の借方に記入します。その原因の資本金で増えたことも記入することになります。また、資本金が増えました。もう少し分かりやすくいうと、羽生さんが会社に投資した金額は、会社設立前は0円であったのに、今回の出資によって、1,000万円になりましたから、即ち、株主からの出資額が増えたということは、会社の資本金が増えたということになります。そこで、資本金勘定の貸方に記入することで、資本金という資本の勘定が増加したことを表現します。

 会社の設立の際には、現金を出資するので、現金/資本金という仕訳が普通ですが、それ以外の形態をとることがあります。例えば、出資者が自分の所有する土地、建物、自動車その他、現金や預金以外の個人の財産を会社に提供することがあります。この場合、賃貸ではなく、会社の名義に変更して出資する場合を現物出資といいます。
 現物出資した場合にも、個人の財産が会社のものになるので、受入れた土地や建物等は、会社の資産として扱われます。従って、土地/資本金とか、建物/資本金というような仕訳になります。
 例2:羽生さんは、更に、建物2,000万円を株式会社羽生商店に出資した。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
建物 
20,000,000
資本金 
20,000,000

総勘定元帳
建物

借方
金額
貸方
金額
資本金 
20,000,000
   

資本金

借方
金額
貸方
金額
    建物 
20,000,000

 このような場合にも、取引の8要素を思い出して、仕訳や元帳の記入をすることになります。会社にとって、現金と建物という資産が増えました。資産の増加を表現するには、仕訳では、借方にその資産の勘定科目である現金や建物を記入します。また、元帳では、現金や建物という資産の勘定科目は、借方で増加を意味しますから、現金や建物の元帳には、借方に記入されます。

 また、会社を設立するには、法人登記等の準備が必要になります。その他にも、会社を設立して、営業を開始するまでの準備も必要です。その準備に係る支出は、将来の長い期間にわたって現金を創出するため、資産として扱われています。言い換えると、支出の効果が長期間現れるので、設立や開業のために支出したものは、(繰延)資産となります。
 会社を設立するための支出は、創立費あるいは設立費という繰延資産の勘定科目で表します。創立費で処理されるものは、会社の設立までに係る、定款や諸規則の作成に係る代金、株式募集等に係る広告代金、株券等の印刷代、金融機関や証券会社への取扱手数料、創立総会に係る代金といった設立費用や発起人(会社を設立しようとする人達)の報酬等があります。
 例3:株式会社羽生商店の設立のため、久保司法書士事務所に委託していた登記業務が完了した。同司法書士事務所に対する報酬500,000円を現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
創立費 
500,000
現金 
500,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    創立費 
500,000

創立費

借方
金額
貸方
金額
現金 
500,000
   

 会社を創立するための支出、つまり、創立費は、繰延資産という資産の項目ですので、まず、創立費という資産が増加したことになります。従って、創立費を仕訳帳の借方に記入します。そして、例3では、創立費を現金で支払ったので、現金が減少したことを表すために、仕訳帳で現金を貸方に記入します。
 元帳の記入では、創立費の支払のために現金が減少したので、貸方に金額とその支払の原因である創立費を記入します。一方、創立費という資産が増加しましたので、借方に現金によって増えたことを示します。

 設立後、営業を開始するまでに係る支出を開業費または開業準備費という繰延資産の勘定科目で表します。開業費で処理されるものには、設立から開業までに係る、土地や建物の賃借代金、従業員を募集したり開業をアピールするための広告代金、従業員の給料等があります。
 例4:株式会社羽生商店は、広告代理店の加藤広告株式会社に依頼していた従業員募集と開業時のセール広告の代金200,000円を現金で支払った。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
開業費 
200,000
現金 
200,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    開業費 
200,000

開業費

借方
金額
貸方
金額
現金 
200,000
   

 創立費の場合と同じで、開業費という繰延資産の増加を表すことになりますので、仕訳帳の借方に創立費と記入します。元帳の記入も開業費の勘定の借方に記入されます。
 例1〜例4までで、現金と資本金の総勘定元帳は次のようになります。他の勘定科目(建物、創立費、開業費)の元帳は、それぞれの例の元帳と一致します。

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
資本金 
10,000,000
創立費 
500,000
    開業費 
200,000

資本金

借方
金額
貸方
金額
    現金 
10,000,000
    建物 
20,000,000

 また、貸借対照表(残高試算表)を作成すると次のようになります。

貸借対照表

資産の部
金額
負債及び資本の部
金額
現金
創立費
開業費
合計 
9,300,000
500,000
  200,000
10,000,000
資本金
 

合計 

10,000,000
 

10,000,000

 ○練習問題
 Q.1.次の取引を取引の8要素で示してみましょう。
 A.現金1,000,000円を元入れして開業した。
 B.商品3,000,000円を元入れして開業した。
 C.開業記念セールの広告代500,000円を現金で支払った。

借方
貸方
   
   
   

 解答

借方
貸方
資産の増加
資本の増加
資産の増加
資本の増加
資産の増加
資産の減少

 Q.2.次の取引を仕訳帳に記入してみましょう。
 現金4,000,000円と建物6,000,000円を元入れして開業した。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
       

 解答

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
現金
建物 
4,000,000
6,000,000
資本金 
10,000,000

 Q.3.次の取引を元帳に記入してみましょう。()内には勘定科目を入れましょう。
 株式会社を設立にあたって、株券の印刷代100,000円と募集広告代200,000円を現金で支払った。

総勘定元帳
(   )

借方
金額
貸方
金額
       

(   )

借方
金額
貸方
金額
       

 解答

(現 金)

借方
金額
貸方
金額
    創立費 
300,000

(創立費)

借方
金額
貸方
金額
現金 
300,000