第1章 簿記とは

1 簿記の意味と種類
 簿記とは、企業や個人事業における取引を、一定のルールに従って記録したり、計算したり、集計したりする技術で、財務諸表といわれる書類を作るための一連の帳簿記入の手続きといえます。
 簿記には、単式簿記と複式簿記というのがあります。
 単式簿記は、お小遣い帳のように、何に使ったかを書いたりする摘要欄やその金額を記入する金額欄があって、収入は+として、支出は−として処理しながら残高を計算する記帳技術です。

図表 単式簿記の記入例

日付
摘要
金額
残高
1/1  前月から   
20,000
1/5  友達と食事 
-3,000
17,000
1/20  給料 
100,000
117,000
1/21  普通預金へ 
-90,000
27,000
1/25  新聞代 
-3,000
24,000

 一方、複式簿記は、増えたり減ったりを+や−の記号ではなく、左(借方という)や右(貸方という)に金額を記入することで表現します。また、摘要欄に加えて、その取引について勘定科目というもので、取引によって生じた事柄を表現していきます。

図表 複式簿記の記入例(仕訳帳)

日付
借方
貸方
金額
1/5  交際費  現金
3,000
1/20  現金  売上
100,000
1/21  普通預金  現金
90,000
1/25  新聞代  現金
3,000

図表 複式簿記の記入例(総勘定元帳 現金)

借方
金額
貸方
金額
売上
100,000
交際費
3,000
    普通預金
90,000
    新聞代
3,000

 複式簿記(以下、簿記)では、仕訳帳や(総勘定)元帳という帳簿で取引やその取引によって生じた事柄を記録することになります。例えば、単式簿記では、1/5の取引について現金が減ったことを−記号で表示しますが、複式簿記では、現金が減ったことを、仕訳帳では、現金という勘定科目を貸方に、現金の元帳では貸方に現金が減った金額とその原因となった勘定科目(交際費)を記入することで表現します。
 また、複式簿記では、借方と貸方の金額は一致します。これを貸借平均の原則といいます。

2 取引と取引の8要素
 会計上(簿記上)の取引とは、経済的価値の変動をもたらす事象(事柄)、もっと簡単にいえば、その活動が金額で表現できる場合に取引といいます。
 例えば、商品を購入したいという注文を受けた場合、一般的には取引というのですが、簿記では、キャンセルがあったりするので、その契約が十分に履行(この場合、法的に商品代金を請求できる)されるといえる時点(商品を引き渡す)まで、取引として扱いません。一方、火災や盗難等は、取引とは一般にいいませんが、簿記では、火災でいくらの建物がなくなったとか、盗難でいくらの現金がなくなったと、金額で表現できるので、取引となります。
 取引は、大きく分けて、2つの要素に区分することができます。例えば、現金で1,000,000円の自動車を購入したとすると、1,000,000円現金が減って、1,000,000円分の自動車が増えることになります。そこで、2つの要素を借方と貸方に分けて、記入することになるのです。
 取引を記録したり、集計したりするときに、次の取引の8要素といわれる関係が常に重要になってきます。

図表 取引の8要素

 
 上記の例で、現金で自動車を購入したことで、現金が減って、自動車が増えたわけですが、それを取引の8要素でみてみると、現金という資産が減ったので、このことについては左の貸方に表現することになり、一方、自動車という資産が増えたので、このことについては右の借方に表現することになります。

仕訳帳

借方
金額
貸方
金額
車両運搬具 
1,000,000
現金 
1,000,000

総勘定元帳
現金

借方
金額
貸方
金額
    車両運搬具 
1,000,000

車両運搬具

借方
金額
貸方
金額
現金 
1,000,000
   

 

3 資産、負債、資本、収益、費用
 取引を2つの要素に分類して、取引を記録して、集計していくわけですが、そのためには、取引によって、どんな事象が事柄が生じたのか検討しなくてはなりません。その場合には、まず、資産、負債、資本、収益、費用のどれに該当するのかが重要になっていきます。
 そこで、資産、負債、資本、収益、費用というものがどういったものかを、簡単に示すことにします。
 資産とは、現金や現金になるようなもの(現金を増やすもの)をいいます。資産には、現金の他に、当座預金や普通預金等の銀行預金、建物、土地、特許権等があります。
 負債とは、現金を減らすものをいいます。負債には、借入金等があります。
 資本とは、企業の出資者(所有者)からの元手をいいます。
 収益とは、企業の活動によって生じた成果をいいます。収益には、売上高や受取利息等があります。
 費用とは、収益を生むための努力をいいます。費用には、賃金給与、交際費、通信費、交通費等があります。

4 仕訳帳と元帳(総勘定元帳)
 簿記は定義で示したように、財務諸表を作成するまでの一連の手続きからなっています。その流れは、取引の発生→仕訳帳に仕訳記入→元帳へ転記→試算表作成→決算手続き→貸借対照表及び損益計算書の作成となります。
 取引をそのまま記録するのが仕訳で、取引によって生じた資産や負債等を項目(勘定科目)ごとに分類して収益するのが元帳です。
 上記の自動車の購入の例では、現金で1,000,000円の自動車を購入したことを記録したものが仕訳です。そして、現金や車両運搬具という勘定科目ごとに取引を記録しているのが元帳です。

 簿記は、企業の取引を表現する言語といえます。従って、ある事柄(取引)を文章(仕訳や元帳)で表現するには、文法(取引の8要素)に従って、品詞(資産、負債、資本、収益、費用)に適した単語(勘定科目)を配列することになります。

 ○練習問題
 Q.1.次の項目を資産(A)、負債(B)、資本(C)、収益(D)、費用(E)に分類してみましょう。

項目
解答
項目
解答
項目
解答
電気代    パソコン    受取利息   
商品の購入    広告代    銀行からの借入   
商品の販売    開業時の店主の出資    購入した土地   
未払の仕入代金    従業員の給料    店主からの借入   

 解答

項目
解答
項目
解答
項目
解答
電気代 
E
パソコン 
A
受取利息 
D
商品の購入 
E
広告代 
E
銀行からの借入 
B
商品の販売 
D
開業時の店主の出資 
C
購入した土地 
A
未払の仕入代金 
B
従業員の給料 
E
店主からの借入 
C

 Q.2.取引の8要素を完成させてみましょう。

借方
貸方
   
   
   
   

 解答

借方
貸方
資産の増加
資産の減少
負債の減少
負債の増加
資本の減少
資本の増加
費用の発生
収益の発生

 Q.3.次の取引を取引の8要素に分類してみましょう。
 例:現金で車両を購入した。

借方
貸方
資産の増加
資産の減少
 A.従業員の給料を現金で支払った。
 B.借入を現金で返済した。
 C.商品を販売したが、代金はまだ受取っていない。
 D.土地を購入したが、代金はまだ払っていない。
 E.家賃の入金日になったが、入金がまだない。
 F.来月に払う予定の広告代の請求書を受取った。
借方
貸方
   
   
   
   
   
   

 解答

借方
貸方
費用の発生
資産の減少
負債の減少
資産の減少
資産の増加
収益の発生
資産の増加
負債の増加
資産の増加
収益の発生
費用の発生
負債の増加